
卒園式——それは子どもにとって大きな節目であり、親にとっても成長を実感する特別な日。
でも、自閉症スペクトラムの息子にとっては、「いつもと違う」その空気が大きな負担になります。
今回は、息子が過ごした二つの園の卒園式の様子と、それぞれに向けて準備してきたこと、親として感じた葛藤と喜びを記録します。
同じように悩み、奮闘しているご家庭にとって、「うちも同じだった」と少しでも安心してもらえる時間になりますように。
子どもが安心して卒園式に臨むには、
「本人の特性を理解した上での準備」と「親自身の心の余白」が大切です。
特性から、息子は「環境の変化」や「普段と違う空気感」に強いストレスを感じます。
卒園式のような行事には“その場に行く前からの準備”が欠かせませんでした。
さらに、親が「見守る側」としてどうするか、自分自身の心のケアも欠かせないと痛感しました。
通常園では、あえて母が不参加を選び、本人が自立した形で式に臨めるよう工夫。
本人の視点から“別の目標”を持たせて対応。
並行通園の大変さ、孤独感、体調不良まで重なり、本当にしんどい時期もありました。
それでも、「今ではなく未来のための種まき」と考えることで、ようやく前を向けるようになりました。
卒園式は「ゴール」ではなく「一区切り」
子ども自身の成長に目を向けると同時に、親も自分をいたわりながら進んでいくことが大切です。
これからも、どんなときも「応援団」として寄り添っていきたい——そんな想いを強くした卒園式でした。
ASDの息子の卒園式

息子は二つの園を卒園しました。一つは通常の園、もう一つは療育先の園です。
通常園の卒業式
通常の園の卒園式は、ママは参加しませんでした。
「厳かな雰囲気・いつもと違う雰囲気が苦手な中、嫌なことがあるとママにべったりになってしまう」という理由です。他の子の門出でもあるので、うちの子が式中にママにべったりになると式の進行も妨げてしまうことにもなりかねないので、残念ですが私は我慢しました。
子供には体調を理由に欠席することを事前に伝えていました。
子供も納得してくれて、「ママは来ない」という心構えができているようでした。
卒園式を息子と想像した
ママがいなかったのがよかったのか、彼が成長したのか分かりませんが、
式中も他のお友達と同じように過ごすことができました。
式で発言する言葉も、何度も自宅で練習していたので、それも本人の安心感と自信につながったようでした。
言葉は短いものですが、先生に紙に書いてもらい自宅でもお風呂で練習をしました。
「ママは当日聞けないから、言っている姿を見たいな」と話し、一緒に卒園式を想像しながら練習でした。
当日出席するパパには内緒でママと練習しようとパパをびっくりさせようという話しもしながら。

もう一つ息子の頑張りに繋がったのは、式が終わった後の頑張ったねのご褒美でした。
本人がほしいと言っていたスプランキーというキャラクターのお人形を買う約束をしました。
自分がほしいモノはやっぱり原動力になりました。
療育園での卒園式
療育園での卒園式は親として少し気が楽です。
いろいろなタイプのお子さんがいるので、席を立ち歩く子や先生から離れない子など様々でした。
息子は去年の4月の入園式では席に座っていることができませんでした。
立ち歩いたり、椅子の上に登ってしまったり、一緒にいる私の気持ちが持たなかったのを覚えています。
普段と違う場所で落ち着いていられた方法
息子は普段と違う環境がとても苦手です。
この卒園式の会場は、市役所のホールでした。
そのため、普段は使わない会場だったので、緊張はMaxだったみたいです。
でも、療育先が事前に会場を使用したリハーサルをしてくれたました。
また、頑張れたのは、上記に記載した「ご褒美」もそうですが、
ホールでの待ち時間にタイマーを使用しました。
自分はどのくらい席に座っているかの新記録を立てよう‼という目標を。
卒園式という目標ではなく、違う視点から目標を本人に伝えていました。
式には集中していない場面もありましたが、4月の様子とは別人でした。
本人が1年で成長した結果だなと嬉しく、また親の私たちも本人の行動に対しての
対処法を学べているという思いが少し嬉しくなりました。

こちらの卒園式はいろいろな子がいるので、みんな違ってみんないいという言葉がしっくりときました。
お互いがいろいろなことをしていても、寛容に見守っている雰囲気が好きでした。
通常の園の卒園式で感じるような緊張感がなく、本人も過ごしやすかったと思います。
世の中がもっとこんな雰囲気になったらいいのになと思う一日でした。
療育一年で学べたこと
並行通園は本当に大変でした。
お互いの園の持ち物や行事・それぞれの先生との連絡など、親もてんてこ舞いだし。
卒園式では、卒業証書のもらい方がそれぞれで違うと言っており、
それに対応するのも本人は苦労だったようです。

並行通園でよかったことは、息子の世界が広がったこと・色々な大人がいるということ・世の中には理不尽があるということをしれたこと。また内面的に成長ができたことがよかったなと思います。
療育に行くようになって、通常の園が好きになれたことも本人にはよかったと思います。
療育に行く前は退園したいという気持ちが強かったので。
別の環境に飛び込んで、いろいろ知れたことがよかったなと。
親の心情


並行通園もよし悪しで、ストレスで、甘えが強くなったり、問題行動が増えたりした時もあって、
それに親子で振り回されてすごく辛かったし、苦労がなかったというと嘘です。
すごく大変でした。めちゃ泣きました。殴ってしまうのでないかと思うこともありました。
実親には頼りたくても、住まいは遠く、それぞれの生活があると思うと頼れずに。
頼れる行政サービスはそこまでないし、あっても一から子どものことを話したりするのが、それも苦痛で。
イライラしたり、悲しくなったり、実際体調不良で不正出血が2ヵ月続いたりと。
ボロボロだったなと思います。
子供の行動に対して目くじら立ててしまうこともあるし、
かと言って子供が変わるわけではないし。
通常の園にいけば、先生からの言葉はキツイし。
療育先では子供がストレスを感じてくるし。
なんのための療育?保育の意味とは?と思うこともあったけど、
今ではなく、未来のための種まきの期間だったと思うことで自分を落ち着けています。
私も同じ境遇で、相談しやすいママもいたけれど、
それぞれに大変だったり、
まだ、関係ができたばかりだとどこまで話していいか分からないし。
そんな感じで孤独を感じていた気がします。
これからも応援団。
息子が迎えた二つの卒園式。
それぞれの園での過ごし方には違いがあり、
本人の成長とともに、親としての私の関わり方や工夫もまた大きく変わりました。
「ママは行かない」という選択や、事前に繰り返したイメージ練習、
「ご褒美」や「タイマー」といった具体的な対策をし、
これらが彼にとって「安心」の土台となり、少しずつ「できた」を積み重ね力に。
並行通園は親にとっても大きな挑戦で、孤独や不安に押しつぶされそうな日もありました。
何はともわれ、すごく大変だった期間が終わったと思っています。
卒園は人生の一部。大切なのは、これからも子どもの一番の応援団であり続けること。
うまくいかない日もあるけれど、信じて寄り添い続けたいと思います。